【産廃環境汚染問題】水銀廃棄物から発生した水俣病とは

2017年11月03日 |

現代にも爪痕を残す水俣病とは

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日本の熊本県水俣市で発見された水俣病は『世界に類を見ない規模の水銀による公害』として、今でも語り継がれています。

水銀による健康被害をなくすために、先進国では水銀の利用を減らす動きがあります。しかし、途上国では現在でもさまざまな用途で水銀が使われ、更には不適切処理が続いています。

水銀による環境汚染と健康被害という悲劇が繰り返されることを防止するために採択された『水銀に関する水俣条約』が、2017年にようやく発行されました。

水俣病の名を冠する『水銀に関する水俣条約』とは

水銀に関する水俣条約とは、水銀による環境汚染を世界規模で管理し、人体への被害を防ぐための取り決めです。2017年に発効条件であった締結国数が50カ国を超えたため、発効されました。

UNEP(国連環境計画)では2001年から始まった水銀対策に関する調査活動が行われてきました。2002年に『世界水銀アセスメント』が公表され、2003年に『UNEP水銀プログラム』が開始されたことが、水俣条約の始まりです。

水俣病の原因になった水銀廃棄物の不適切処理に関する内容はもちろんのこと、水銀や水銀使用製品の輸出入・製造工程に関することなど、水銀に関わるあらゆる分野での取り決めが組み込まれています。

条約の英名にも『Minamata』が使われている

『水銀に関する水俣条約』の英名は『the Minamata Convention on Mercury』。水俣病は世界に類を見ない災害であるため、英名にも『水俣』という名前が使われています。

『水俣条約』と名付けられたのは2013年のことです。第5回INC(政府間交渉委員会)にて、条約の条文案が合意される際にこの名称に決定されました。

水銀に関する水俣条約の前文には『水俣病の重要な教訓』とも記載されていることからも、水俣病がどれだけ大きな問題だったのかを物語っています。

水俣病とは熊本県水俣市で発見された公害病

水俣病とは、昭和31年(1956年)5月1日、熊本県水俣市で公式発見された病気です。他の類を見ない病気だったため、地名から命名され『水俣病』となりました。

発見された当初、すぐに『工業廃水に含まれているメチル水銀に汚染された魚介類の摂食』が原因だとすぐにわかりませんでした。見当が付けられてからも、メチル水銀が水俣病の原因であると認められるために、長い期間を費やしたのです。

>水俣病問題の歴史について詳しくはこちらの記事を参照してください

水俣病は産廃(工業廃水)の不適切処理で発生した

水俣病の原因は『廃棄物の不適切処理』。メチル水銀を含んだ工業廃水をそのまま海に流してしまったことで、水俣湾周辺の魚介類の汚染してしまいました。

工業廃水そのものを飲んでももちろん水俣病と同じ状態になる可能性はあります。しかし、少量の水銀であれば問題なく体外に排泄され、水銀中毒にはなりません。

水俣病の原因は工業廃水そのものを人が摂取したのではなく、メチル水銀を含んだ工業廃水で環境を汚染してしまったことです。このことで、魚やプランクトンの中で『生体濃縮』という現象が起こりました。

水俣病は、メチル水銀を生体濃縮した魚を人間や猫が摂食し、排泄しきれないほどの水銀を摂取してしまったことによって発生してしまったのです。

『生体濃縮』とは生体の中で成分が蓄積して濃くなること

『生体濃縮』とは、排出されにくい成分を摂取し続けることで生体の中で蓄積し、どんどん濃くなっていくことです。メチル水銀以外でも起こり得る現象です。

100ml中1mlメチル水銀を含んでいる水があったとします。この工業廃水を飲むことで1mlのメチル水銀を摂取することになります。

摂取されたメチル水銀が排出されず、体重1キロの生体の中で1ml、2ml・・・と、その生体を占める割合が大きくなっていきます。この現象が『生体濃縮』です。

生体濃縮され水銀濃度が高くなった魚を摂食して多量の水銀を摂取してしまっていたことが、水俣病が発生した要因であると言われています。

水俣病を筆頭にした『四大公害病』

公害による環境汚染で発生してしまった病気が『公害病』、特に被害が大きかった4つの公害病をまとめて『四大公害病』と呼びます。その4つとは、以下の通りです。

  • 水俣病
  • 水俣病への対応が遅れてしまったがために発生した『第二水俣病(新潟水俣病)』
  • 富山県神通川の水質汚染が原因の『イタイイタイ病』
  • 三重県四日市市で発生した亜硫酸ガスによる大気汚染が原因の『四日市ぜんそく』

『公害病』の名の通り、4つの病気全てが産廃によって生じたものです。

このような歴史を繰り返さないために、廃棄物分野では産廃が確実に適切な処理がなされるよう、あらゆる取り組みが行われています。『水銀に関する水俣条約』や『産廃マニフェスト』もそのうちです。

>四大公害病について詳しくはこちらの記事を参照してください(後日掲載予定)

水俣病にはさまざまな症状がある

水俣病の主な症状には、手足がしびれたり、体が震えたり、しっかりと話せなかったり聞き取れなかったりといったものです。

重症の場合には意識が定かではない状態になって、そのまま死に至ることもあります。軽症の場合でも、頭痛や疲労感、味覚や嗅覚の異常、耳鳴りなどの症状があります。

胎児性水俣病は生まれながらにして水俣病の子どもの病名

『胎児性水俣病』とは、生まれながらにして水俣病を患っている子どもの病名です。脳の発育不良、神経細胞の破壊により、あらゆる症状が起こります。

メチル水銀は胎盤から吸収されやすく、胎児に移行しやすい性質を持っています。その上、胎児の神経系は発達途中であり、吸収した水銀の影響を受けやすいのです。

1961年には、『胎児性水俣病』が確認されました。妊娠している母親が水銀を摂取したことによって、胎児が水銀中毒になってしまっているという状態です。

水銀由来の病気=水俣病ではない

水銀由来の病気は他に『水銀中毒』があります。水俣病は、産廃の不適切処理など産業活動がきっかけで生物が水銀に汚染された結果、人が水銀を摂取して水銀中毒になってしまう病気のことです。

水銀は生活のいたるところで利用されているものです。水俣病とまではいかなくても、しっかりと水銀廃棄物の管理と処理をしなければ水銀中毒が起こる可能性は充分にあります。

「そんな大規模な水銀廃棄物ではないから」と適切な処理を怠ると、取返しのつかない問題に発展するかもしれません。少量であったとしても、水銀廃棄物は適切に処理しましょう。

水俣病資料館の来館者が100万人を突破

水俣病の悲劇を後世に伝えるべく、資料が保管された『水俣病資料館』が熊本県にあります。全世界から年間5万人が訪れており、平成29年9月22日には100万人を達成しました。

水俣病の問題は、病気の発症だけではありません。経済を優先してしまったがために、適切な対応がなされなかったこと、未だに水俣病をめぐって訴訟が行われていることなど、あらゆる問題が絡み合っています。

こうした観点から、産廃の不適切処理や公害といった問題だけでなく人権教育の場としても活用されているようです。

産廃による人災を起こさないための今後の取り組み

水俣病は『人災』です。産廃を適切に処理していれば水俣病問題は起こりませんでした。そして、適切に処理をすれば二度と同じ問題を起こさないようにすることが可能なのです。

産廃マニフェストや水銀に関する水俣条約などは、水俣病のような産廃による問題を二度と引き起こさないために考えられたシステムです。

『四大公害病』の原因がそれぞれあるように、人に害を及ぼす産廃はメチル水銀だけではありません。水銀だけではなくあらゆる産廃を適切に処理するために、廃棄物分野ではさまざまな取り組みがなされています。

水俣病問題はまだまだ終わる兆しさえ見えていません。だからこそ人の手でできることから少しずつ取り組んでいく姿勢が大事なのです。


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