【平成29年10月1日から施行】水銀廃棄物処理の際に産廃排出業者が気を付けるべきこと

2017年10月18日 |

水銀の利便性と危険性は表裏一体

2e839136d5bd5d0c290ded065a9dd796_m

水銀は、日常生活で使う道具の至るところに利用されています。よく知られているのは水銀を使用した体温計ですが、それ以外にも、蛍光灯や電池などにも水銀が使われているのです。

水銀は私たちの生活になくてはならない存在です。その一方で、私たちの生活を脅かす性質を持っていることも忘れてはいけません。

『水銀に関する水俣条約』が2017年8月16日に発効

1956年に熊本県水俣市で公式発見された水俣病は、水銀が原因でした。水俣湾に排出されたメチル水銀を含む工業廃水に汚染された魚を摂取し、水銀が体内に蓄積されてしまったことが要因です。

産廃による環境汚染がきっかけで悲劇を繰り返さないために、『水銀に関する水俣条約』が2013年10月に採択されました。世界規模で水銀汚染防止を目指していこうという主旨です。

水俣病とは?水俣病の症状や原因などについてはこちらにまとめています。

2017年5月に条約の発効要件であった『締結国数50ヶ国』を達成し、8月16日にようやく条約が発効されたのです。

それに伴い『廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則』が改正されました。2017年10月1日から施工されることとなり、以下の5つの項目が追加されています。

(1) 特別管理一般廃棄物又は特別管理産廃の処分基準の追加
(2) 廃水銀等の硫化施設の産廃処理施設への追加
(3) 水銀使用製品産廃及び水銀含有ばいじん等に係る処理基準の追加
(4) 従来の水銀を含む特別管理産廃に係る処理基準の追加
(5) 最終処分場の維持管理基準及び廃止基準の追加
環境省 報道発表資料

同年(平成29年/2017年)に交付された廃棄物処理法改正で一部義務化された電子マニフェストについてはこちらにまとめています。

新たに定義された水銀廃棄物について

水銀廃棄物は『水銀含有ばいじん』『水銀使用製品廃棄物』『廃水銀等』の3つに分類されます。平成29年10月1日に施行された改正法案では、新たな項目が追加されただけでなく、定義が改められている項目もあります。

平成28年4月1日施工の改正法で水銀廃棄物について学んだ方も、今一度確認しておきましょう。

水銀含有ばいじん(水銀を含んでいる燃え殻や廃酸などちり)

『水銀含有ばいじん』とは、水銀を含んでいるばいじんのことを指します。水銀含有ばいじんとして扱わなければならない条件が以下のように定義されています。

  • ばいじん、燃え殻、汚泥、鉱さいのうち、1キログラム中に15㎎以上の水銀を含んでいるもの
  • 廃酸、廃アルカリで、1リットル中に15㎎以上の水銀を含んでいるもの

水銀の含有量については、分析機関に依頼して確認する必要があります。ただし、絶対に水銀が含まれていないと断言できる場合には分析する必要はありません。

水銀含有ばいじんについて、詳細は『水銀廃棄物の分類3:水銀使用製品産廃』を参照してください。

水銀回収義務付け対象とは

1キロ、もしくは1リットル中に水銀を1000㎎以上含んでいる水銀含有ばいじんは、水銀回収義務付け対象として扱われます。

『水銀回収義務付け対象』とされている水銀廃棄物は、加熱の工程で排出される水銀ガスを回収する設備を用いて処理しなければならないと義務付けられている水銀廃棄物のことです。

産廃処理業者のやらなければならないことなので、産廃排出業者はあまり気にしなくても大丈夫です。水銀が含まれているか否かということをチェックして、間違いなく産廃マニフェストを作成することに努めましょう。

水銀使用製品廃棄物(体温計や蛍光灯など、水銀の使用が明記されている製品)

水銀電池や蛍光ランプ等、水銀等を使用していると表示されている製品が廃棄物となってものが『水銀使用製品廃棄物』となります。水銀使用製品廃棄物の場合、水銀含有ばいじんと異なり、水銀の含有量などは関係ありません。

水銀使用製品廃棄物の中でも特に『水銀式血圧計』や『水銀体温計』は、水銀回収義務付け対象となっています。

水銀使用製品廃棄物について、詳細は『水銀廃棄物の分類3:水銀使用製品産廃』を参照してください。

廃水銀等(廃棄となった水銀と水銀化合物)

『廃水銀等』という項目名は『廃水銀及び廃水銀化合物』の略称です。廃水銀に加え、廃水銀化合物がこの項目に分類されます。

平成28年の施行令改正の際に、以下の2つが『廃水銀等』として、特別管理産廃に指定されました。

  1. 特定の施設から排出した廃水銀等
  2. 水銀が含まれている物(一般廃棄物を除く。)又は、水銀使用製品が産廃になったものから回収した廃水銀

今回の法改正で、【1】の『特定の施設』として新たに10種類の施設が指定されました。『廃試薬』の適正処理を主な目的とした指定のようです。

  • 農業、水産又は工業に関する学科を含む専門教育を行う高等学校、高等専門学校、専修学校、各種学校、職員訓練施設又は職業訓練施設
  • 保健所
  • 検疫所
  • 動物検疫所
  • 植物防疫所
  • 家畜保健衛生所
  • 検査業に属する施設
  • 商品検査業に属する施設
  • 臨床検査業に属する施設
  • 犯罪鑑識施設

廃水銀等について、詳細は『水銀廃棄物の分類1:廃水銀等』を参照してください。

産廃排出業者がチェックするべきポイント

今回の法改正で産廃排出業者が自ら運搬、または処理しない場合、チェックしなければならないポイントは4つあります。

  1. 事業場における産廃保管基準の遵守
  2. 産廃収集運搬業者又は産廃処分業者への委託
  3. 委託基準の遵守
  4. マニフェストの交付

それでは、この4つのポイントを順番にチェックしていきましょう。

1.事業場における産廃保管基準の遵守

『廃水銀等』を排出する事業者は、運搬が完了するまで定められた通りに管理を行う義務があります。

  1. 廃棄物に水銀廃棄物が含まれる旨の記載を行うこと
  2. 他の物と混合せずに印を付ける など

揮発した水銀を吸い込んで摂取してしまうことによる人体への悪影響を回避するための指定です。『水銀含有ばいじん』『水銀使用製品』は他の物質に水銀が染み込んでいたり閉じ込められていたりしているので心配ありません。

2.産廃収集運搬業者又は産廃処分業者への委託

『産廃収集運搬業者又は産廃処分業者への委託』も、産廃排出事業者に課せられた義務の1つです。必ず水銀廃棄物を処理できる産廃処理業者に処理を委託しなければなりません。

全ての産廃処理業者が水銀廃棄物を処理できる訳ではありません。『処理を業として行うことができる者』として都道府県知事の許可を受けた産廃処理業者のみが、水銀廃棄物を処理できる資格を持っています。

処理業者の水銀廃棄物処理許可の有無確認も排出事業者の義務

処理業者が許可を持っているかのどうかの確認はなされません。いつもお願いしている処理業者が、水銀廃棄物を処理できる許可を持っているかどうかを排出業者自ら確認しなければいけません。

確認せずに許可を持っていない処理業者に水銀廃棄物の処理を依頼してしまうと、確認を怠った排出業者にも罰則があります。

3.委託基準の遵守。『水銀使用製品産廃』である旨を明記

産廃排出事業者の義務の1つに『委託基準の遵守』が挙げられています。これは、産廃処分業者が水銀使用製品産廃を適正に処理できるように、必要な情報を記載するということです。

4. 産廃マニフェストの交付。水銀廃棄物に関する記入を確実に

正しく情報が記載された産廃マニフェストを交付することも、産廃排出事業者の義務となります。

水銀廃棄物についての項目が追加されたことで、産廃マニフェストの記入事項に以下の項目が追加されました。

当該産廃に水銀含有ばいじん等又は水銀使用製品が含まれる場合はその数量
環境省 水銀廃棄物ガイドライン

水銀廃棄物が含まれる産廃を排出する場合、『廃棄物の種類』内『管理型品目』項目の空欄に項目名を追加します。

水銀使用製品の場合は『水銀使用製品』と追記して、数量を記載します。

追加記載事項には水銀廃棄物の詳しい内容を記載しておきましょう。

>水銀廃棄物を排出する際の産廃マニフェストの書き方、詳細はこちらを参照してください。(後日掲載予定)

要点を把握しつつ、外注できる部分は外注して効率よく対応

法改正の度に大量の資料やガイドラインを読まなければならないとなると、時間も労力も費やさなければならなくなります。『自分の役割でしなければならないことをチェックする』ということに注力して対応するのがベターな対策となるでしょう。

わからない部分、外注できる部分に関しては思い切って外注してしまうのも1つの手段です。

産廃マニフェストを外注したい・産廃マニフェストへの記入の仕方がわからないといった場合は、プラスワンコミュニケーションズの産廃マニフェスト印字サービスをお電話でご注文ください。

産廃マニフェストに詳しいスタッフが正しく記載した産廃マニフェストをご提供いたします。

産廃マニフェストを始め、外注できる場合は利用して、しっかりと法律に対応していきましょう。


ページトップへ
プラスワンコミュニケーションズ
産業廃棄物マニフェスト販売
  • 株式会社プラスワンコミュニケーションズ
  • ご注文 ご注文 0120-381-562
    お問合わせ お問合わせ 0120-381-567
  • FAX:078-805-3710

Copyright © 株式会社プラスワンコミュニケーションズ All Rights Reserved.